始めに断っておくが、WordやExcelのことを悪く言うつもりは全く無い。 ソフトウェアは何も悪くない。ソフトウェアを使う人間がその使い方を間違えることが悲劇を生み出すのだ。今回はその悲劇を避ける方法を紹介したい。
罫線を多様した Word 書類や Excel 方眼紙の編集には、高度な技術を要する。それは文字や画像を挿入することですぐに枠がズレてしまうためである。なにかを記入するたびに様式が次々と破壊されてしまうにも関わらず、様式をキチンと守った状態での提出を求められる場合がある。するとズレとの戦いで時間と精神力を浪費してしまい、生産性を低下させているのである。もったいない。 もちろん正しく構成された書式ならば、このようなズレの被害を抑えることができるはずなのだが、そのように配慮され作成されたものは何故だか少ないのが現状である。 日本中の科学者もこのズレと格闘しており、 ついに政治家に直訴する事態にまで発展した。
このワードの設定とか罫線とかの話、詳しく教えてください。文科省はシステムの次期更新まで改善できないと言ってますが、ホント? https://t.co/p2cBmAR1OK
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2016年10月15日
科研費の申請書に関して、罫線の廃止やラテフの貼り付けの容易化などに加え、どんな改善が必要か、文科省が研究者にお聞きして、次回までに対応することになりましたので、ご要望を文科省までお寄せください。
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2016年10月21日
今後、科研費(おそらく学振も)の申請書に関しては改善される方向に向かうだろう。とはいえ、世の中から罫線問題が消えてなくなったわけではない。今日もどこかの Word や Excel でだれかの時間を精神力を削っているのである。
そんな状況を打開すべく作ったのが superimpose パッケージである。
superimpose パッケージは A4 画像もしくは PDF 上に自由に文字を配置するための(現状) LuaTeX 用のパッケージである。 つまりこのパッケージは通称・奥村メソッドを TeX 上で実行することができる(参考: http://oxon.hatenablog.com/entry/20100309/1268129103)
ここをクリック
動作確認は次の環境のみで行った。
ちなみに pLaTeX ではうまく動かない。それは単に私が DVI → PDF の動作をよく理解していないためだと思うが、LuaTeX では PDF を貼りこむときに xbb ファイルが必要無いなどのメリットがあるので、pLaTeX に対応するつもりは今のところ無い。
superimpose の使い方は次のソースコードを見れば十分わかるだろう。LuaTeX に不慣れであっても次のものをコピペすれば動くはずである。
見てわかるように、やり方は素朴で座標と文字列を記入するだけである。
座標の指定の仕方にはコツがいるが、\SIshowgrid
コマンドで補助用のグリッドが表示されるのでそれを参考に調整すると良い。
上のファイルを hoge.tex として保存し、何らかのA4サイズの PDF と、superimpose.sty 同じディレクトリに入れれば(もしくはパスを通れば)よい。そして、
lualatex hoge.tex
を実行すると元の PDF 上にソースコードで指定された文字を上書きした新たな PDF が生成される。
これで、困ったWord文書やExcel方眼紙に出会っても、PDF に変換してしまえば、あとは TeX だけで文章作成できる!